ココロノイロ

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長澤知之「レーナ」

『GIFT』をタワレコで購入するともらえるデモ音源は、レアすぎて大喜びの特典だった。中でも繰り返し聴いてしまうこの曲について。
★長澤知之「レーナ」

GIFT

GIFT

  • アーティスト: 長澤知之
  • 出版社/メーカー: Atsugua Records
  • 発売日: 2016/12/07

全国にお住まいのレーナさんが羨ましい。長澤くんが(まっすぐ気持ちを捧げるように)自分の名前を連呼してくれる歌になるんだもん、たまらないよね。
長澤くんの声は10代の頃のものだろうか。今ではもう歌えない世界かもしれないなぁって思うと、美しさが増幅されてくる。だけど、こないだの地元でのライブ(照和)で歌ったらしいね。今の長澤くんはどんなふうに歌うのだろう。

弱気になってしまうときや、何かに向かおうとしてるときに聴くと力をもらえる曲だ。
特に讃美歌のようなサビは上へ上へと連れて行かれて、聴いてると雑音が消えていく。そして大切なものだけ見つめられるようになる。
【見渡さないで 見たいものを見て】という「バニラ」のフレーズを思い出す。直接的な表現はときに悲しく感じてしまうことがあるけれど、「レーナ」では言葉じゃなくそう言われているようで、安定しない気持ちに支柱が立つのを感じる。強く持てと。

【こんな僕でさえドアを叩いてもいいのならば迷わないよ】や【君の声の源を考えながら呟くんだ】に胸が熱くなる。私にとっては、どうにか伝えたくて言葉を見つけようとしてるときの感覚を歌ってくれてるようで、背中を押される。

今では長澤くんが作った頃にはなかった「つぶやく」の解釈ができるようにもなっているね。他人にも見えちゃう「ひとりごと」があるもの。それはまたそれで想像が広がっておもしろい。

ところで先日ラジオで長澤くんが「一羽の雀に」という讃美歌を弾き語りしてたのがとても感動的だった。その余韻を感じているときに「レーナ」を聴きたくなったんだけど、ん?そういえば「一羽の雀に」は女性が歌っていたよな。なんて人だっけ?と検索してみたら、レーナ・マリア・ヨハンソンという名前に辿り着いてハッとなって。長澤ブログを遡ってみると、「レーナ」はレーナ・マリア・ヨハンソンという讃美歌の歌手のうたであるという追記が。結果的に遠回りして答えを見つけたということなんだけれど(笑)それも悪くないなって思った。

長澤くんの音楽を解釈するのに感じる壁。中でも宗教的な感覚には太刀打ちできないものがある。歌い出しの【悲しみは全て人間の気取り】とか、メロディやサウンドからそういう雰囲気が醸し出されていると思うんだけど、どうかな?
音楽に救われた人、そして音楽に選ばれた天才の根源をこの曲に見たような感じがしてきて、なんだか遠くを見つめてしまう。その先には星の瞬きが。

ものすごく知りたいのは歌詞の全容で、どうしても聞き取れないところがいくつかあって。今回取り上げたところも、耳から入ってきたのをそのまま書き起こしてるだけだから、きっと表記も違うだろうし。ちゃんと捉えることができたら、もっとこの曲を知れるのに。公開してくれないかな…(してください!)

長澤知之「黄金の在処」

長澤知之の曲レビュー。(2014年に公開したものを、この度書き直しました。)

★長澤知之「黄金の在処」

黄金の在処

黄金の在処

  • アーティスト: 長澤知之
  • 発売日: 2013/11/06
 

2分ちょっとという短さの中で光る、たった4行の歌詞。それだけで、曲の世界がありありと目に浮かぶ。中でも「美々しい」という言葉がとても印象に残る曲。私の言葉の引き出しの中にはないものだったから、思わずハッとなった。ある種の神聖ささえ漂うほどの美しさに吸い込まれそう。

楽器の音も要所要所で輝いて、コーラスもとても綺麗で、ずっと感じていたいくらい。【夕陽の帰り道】という時間帯と場所の設定が切なくも美しい。1日の終わりを感じさせる風景、共にいる相手とのお別れも近づく…という、二重の切なさだから余計にね。問いかけのあとの【ここにある】に、胸が熱くなる。「ここ」とはどこだろう?という想像をしていると、彼の大切にしている価値観が見えてくるような気がして。(僕=長澤くんだったとしたらの話。)

目の前の美しさを捉えたときに光るもの。それをどうにか「とっておく」ことができないものかと思う。日常の中のささやかなことから得られる、生の肯定。時間は止まってくれないから、そのまま残すことは難しいけれど、心の中にはずっと置いておきたい。ずっと在ってほしい。そんなことをこの曲を聴きながら思っている。
(初出:2014-06-11)

長澤知之@月見ル君想フ(2016/07/16)

久しぶりの長澤くん単独ライブ。いつぶりだっけ?という友達との会話に答えが出てこなかったほどの。今回は特に記憶力が残念なことになっていて、細かなところまで覚えていません。セトリすらままならない感じ。私自身の感覚を記録するものでしかないから、ライブレポと言ってはいけないのかも。
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Nagasawa Tomoyuki Acoustic Live 2016
【日時】 2016年7月16日(土)
【会場】 月見ル君想フ
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長澤知之「バニラ」

ひっさしぶりのレビューはこちらの曲。

★ 長澤知之「バニラ」

長澤知之III

長澤知之III

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バニラというと甘いものの象徴。味も香りも、これでもかってくらい甘ったるい。
この歌の「バニラ」は女性だ。「貴女」とも、「君」とも呼び名を変えて。
「僕」は彼女にささやくように語りかける。少しだけ包容力を感じるやさしい歌声で。

歌い出しの「恋していいんだよ」にドキッとする。
でも私はこれ聴いて純粋に「恋しよう」とは思えなくて。なんとなく悲しくなる感じ。歌われてることはその通りだなって思うけど、そうは言ってもそんなに単純じゃないって思っちゃうから。シンプルな「好き」という気持ちだけで成立するのは自分の内側だけのことで、他者の前でもそのままでいることは難しい気がしてしまう。外部との接点が生じると、踏みとどまったり、ちょっと考えてしまったり。ああ、こういうところを歌われているのかしらね?ということは私のための歌?(苦笑)
長澤くんから励まされてるという観点で聴くと、すんなり受け入れられる気がする。彼の書くラブソングって、女心くすぐるというか。
私がハッとなったのは【見渡さないで 見たいものを見て】というところ。
見渡しちゃうと自分を抑えるようになる。見たいものだけ見ていれば、欲望のままにいける。両方の視点を持っている場合、その間を時と場合によって行ったり来たりするから、こう言われると我慢しすぎなんだと気付かされる。
【誰のための笑み 誰のためのキス】ってところにもグッときた。
心を奪われるというのは自分の意思に関係なく、かっさらわれる感じだから、もうそうなっちゃったら、歌われてる通り抱えて走るしかないよね。
「これが欲しい」「こうしたい」っていうのをなかなか出せない人に向けて、でもそれが人間なんだから我慢しなくていいんだよ。それは自分の中にあって、外部から決められたり押し付けられるようなものじゃないんだって言ってくれる歌。
対象が何であれ、好きな気持ちがあれば人は生きられる。恋じゃないにしても、好きなものに夢中になっている人の姿は美しいものだ。心のままに貫け。

Hello,world! / コロニー

本日はBUMPのシングル発売日!前作「ファイター」「パレード」から半年も経たずに新曲が聴けるなんて。BUMPにしては驚きのハイペースぶり。すごいな近頃。前にも増して。

★BUMP OF CHICKEN 「Hello,world!」「コロニー」

Hello,world! / コロニー(通常盤)

Hello,world! / コロニー(通常盤)

  • アーティスト: BUMP OF CHICKEN
  • 発売日: 2015/04/22

通常盤ジャケットはこの2曲を合わせたものの象徴(2進法の球体)ですごく惹かれる。
歌詞を見る前に耳がキャッチした言葉がたくさんで、それだけで泣きそうになった。
自分で守るしかない、繊細で弱くて傷付きやすいところ。そんな、自分の一番大事なものと呼応するかたちで、この歌の世界は響いてくる。
私の「今」を歌っている!と思ってしまう。まるで呼び寄せたかのように、自分のための歌という感じがする。自分の内側に火が灯るような感覚。
綺麗事でも何でもなく、ほんとうのことしか歌ってないんだな。ずっと。

【Keyword】 黄金

キーワード(第4回)
立て続けに長澤くんとBUMPのレビューをアップしたのは、これをやりたかったから(笑)一部の方にはお見通し(?)、今回のキーワードは「黄金」です。
今回の具体例はこの2曲。
長澤知之「黄金の在処」
BUMP OF CHICKEN「firefly」

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BUMP OF CHICKEN「firefly」

久しぶりにレビューを書いてみました。

★ BUMP OF CHICKEN「firefly」

firefly

firefly

  • アーティスト: BUMP OF CHICKEN
  • 発売日: 2012/09/12

前へ前へと進んでいく感じの曲調。この曲はドラマ主題歌だったのだけど、当時は正直あまり感じるものがなかった。それはドラマで流れる部分では見えないところに魅力があったからだと後になって気付く。
firefly=蛍だと辞書を引くまでわからなかった英語の弱い私は、これまでのBUMP曲の流れを汲んで、「fireがflyだと?ひえ~命の炎がっ!(ゼロ!)」などと思いっきり勝手な妄想を展開し、当初は泣きそうになりながらこの曲を聴いていた。歌いだしが「蛍みたいな欲望が~」なのに気付けないなんて我ながら恥ずかしい話だけれど、おかげで解釈が広がったので英語ダメで良かったと思う(笑)

この曲から感じるのは、光の変遷。蛍の「光」を自分の「夢」と重ねて追いかけることがテーマになっていて、中盤以降は追いかけ続けた先を描く。それは【 やめなきゃいけない時が来た 】という、夢に破れる物語。【 頑張ってどうにかしようとして 頑張りの関係ない事態で 】と歌っているように、そうしなければ進めない時も来るんだよね…それは残酷なこと。

一人だけの痛みに耐えて 壊れてもちゃんと立って
諦めた事 黄金の覚悟
まだ胸は苦しくて 体だけで精一杯
それほど綺麗な 光に会えた

諦めることはよくないと捉えられがちだけれど、絶望の中でそう決めたことを、この曲では【 黄金の覚悟 】としている。夢を「微かな金色」と歌ったのに対し、諦めた事を「黄金」という。同じ色でも黄金はずっしりと感じて、グッとくる。しかも続くのが「覚悟」なのだから、この重みときたら!!
また、「綺麗な光」とは【 まだ胸は苦しくて体だけで精一杯 】な状態のこと。一瞬「??」となってしまうけれど、ここがとても藤くんらしいところだなと思う。藤くんがこれまで描いていることには、人の命は幸せとは対極にあるような状態のときにこそ光を放つ、みたいなイメージがあって。このフレーズも、まさにそうだなって思った。

それにこの曲、表向きはfirefly(蛍)の光=夢をテーマにしているけど、もうひとつテーマがあると思っていて。裏テーマというか、表のテーマを包括するものというか。それは冒頭の私の妄想「fireがfly」なんだ。私はBUMPの曲でfireというと命の炎、flyは宇宙飛行を連想する。《命が宇宙飛行する》 =命の時間、 は藤くんが一貫して歌い続けていること。曲の冒頭から微かに聞こえるファーーーという音がずっと鳴っているんだけど「R.I.P.」や「宇宙飛行士への手紙」のそれと似た、宇宙を感じさせる音なので、あながちこの裏テーマは間違いじゃないのではないかと思う。
サビの直前に入る【命の仕掛け】というキーワードも、まさにそうで。 夢を追いかけることがこれまで命を燃やすことだったけれど、それが不確かなものとなった中、【唯一解っていた大切なもの】は、先述の【まだ胸は苦しくて体だけで精一杯 それほど綺麗な光に会えた】 の部分になる。つまりは、それでも生きているということ。それは【決して消えない光】なんだ。夢も絶望も、生きていることの上で成り立っているのであって、そういう意味では、生きていること以上の大切なものなんてないんだよね。「fireがfly」は若しくは、《命の炎を掲げる》とも言えるかもしれない。

最も光るフレーズは、最後の2行にある。

今もどこかを飛ぶ あの憧れと
同じ色に 傷は輝く

追いかけてきた夢が【憧れ】へと変わっている。これは、夢がもう追いかけない遠い存在となってしまったことを示唆する表現に思える。また、【黄金の覚悟】を【傷】としていること、そしてそれは【憧れ】と同じ色に輝く、と結論づけるところがとても感動的だ。「同じ色」であっても、先述の「金色」と「黄金」の解釈のように、自分の中に存在する【傷】は重みが違うと感じられるし、しかも「光る」ではなく「輝く」のだから、憧れよりも強く光っているように見える。私はこのシメが自分にはない発想だったせいか、こみ上げてくるものがあって。ここを聴きたくてこの曲を聴いているところがあるんだ。

夢を叶えることができる人は僅かだ。それが叶わず生きていく人の方がずっと多い。それなのに世の中には「頑張れば、諦めなければ、いつかきっと夢は叶う!」といった応援ソングが蔓延している。けれども、この曲は違っていた。幼馴染でバンドを組み、職業として成り立たせ、着実にキャリアを積みながらも第一線にいる、そんな彼らがこのような歌を歌えるのか。すごい。
自分や誰かを表す単語なしで構成される歌詞は、聴き手に現実味を与えた。この曲に僕も君も出てこないのは、大成した者の立場である彼らが、僕や私、あるいはあなたとなって歌うことが、この曲の意にそぐわないとわかっていたからなのではないか。こういう形の歌詞はBUMPでは珍しい気がする。

まとめると、「光」が共通項となるキーワードが3つあるのがこの曲の特徴。
★ 夢 ( ハートから抜け出した欲望 )
★ 黄金の覚悟 ( 心についた傷 )
★ 命 ( 生きようとする体 )
実際の歌詞に直接的な「光」という単語で記されるのは3度だが、これらは【生きている事】=命 を指すと見ている。当初は「夢」や「黄金の覚悟」と感じられていたところもあったけど、それらを包括する「命」、という構図が見えた。

物語はまだ終わらない 残酷でもただ進んでいく
おいてけぼりの空っぽを主役にしたまま 次のページへ

夢を追いかけること、そしてそれを叶えること。それだけが人を生かすのではない。苦悩も恐怖も絶望も、そして心についた傷も連れて行く― これこそ、応援ソングだ。生きて行くための。生き抜くための。自身の体験や実感があることで、歳を重ねるほどに胸に響く曲になるのだと思う。