ココロノイロ

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長澤知之「言葉のないエレジィ」

SILENTSIRENレビュー最終回。やっと出来た。
前回のレビューから7ヶ月・・・決してサボっていたわけではなく、準備はしていたんです。でも聴けば聴くほどレビューを書くことが難しくなってしまって。だって「言葉のない」エレジィなんだよ?それを言葉で表そうとすることに無理があるというか、書くこと自体がナンセンスに思えちゃって。でもこれなしに私のSILENTSIRENレビューは完結しない。この2つの思いの間で、モヤモヤ~となっていたのでした。 

実は、SILENTSIRENレビューを書こうと思い立ったのはこの歌がきっかけ。いちリスナーとして、長澤くんの歌から感じたこと・見えたものをどうしても伝えたくなって。ミニとはいえ、アルバムの感想を1曲ずつ書いたのは初めてのことでした。

★8.secret track 「言葉のないエレジィ」

SILENT SIREN

SILENT SIREN

  • アーティスト: 長澤知之
  • 発売日: 2009/08/05

「言葉のないエレジィ」は、そんなに繰り返して聴けない歌なんだけれど、一番最初に聴いたときの感覚は今でも忘れられない。
正直、そこまで歌にしてしまっていいものかと思ってしまった。 

これは「茜ヶ空」に出てくるフレーズから派生してる歌で、SILENTSIRENをエンドレスリピートするとわかるけど、1曲目とつながってるんだよね。
「スリーフィンガー」が終わり、この歌がはじまるまでの45秒間の沈黙。・・・昼間だと待てない(苦笑)
だから夜眠る前とか、時間を気にせず自由にいられるときに聴くことが多い。真っ暗な中でね。明るい時間帯には聴きたくない歌なんだ。
いつでもどこでも聴けるといった身近さはなくて。自分の状態も万全なときより、なんとなく不安定なときの方が響く、そんな歌。

この歌に入り込めたとき、すべての活力を奪われて何もできなくなってしまう。
それくらいの哀しみが体中を埋め尽くす。
どうしようもないとはこういうことなんだろうな。
表現行為が伴えないほど、それはとてつもなく大きくて、重く暗い。
だけど確かにそこに在る。

どんな言葉も無意味だと思わされた。
それと同時に、遠くにいる長澤くんを抱きしめたくなった。(変な意味ではない)
それは、言葉にできないもどかしさというか、でもいいんだよっていう思いから。
とにかく、何かせずにはいられなくなってしまう。

結局、人はひとりだ。
ふたりで居てもひとつにはなれないし、どうしたって全ては解り合えない。
そんなことを、この歌を聴いていて思う。
目をそらしたくなるようなことも嘘偽りなく歌うこと。
きっと長澤くんだから歌ってもいいことなんだと思う。
他の人がやろうとしても到底かなわないし、できないだろう。

究極を、突き詰めた先を、知っている。
ここまでわかっているというのに、それでも彼が歌う理由は何だろう?
いつもじゃ彼の音楽世界を何よりも身近に感じている私でさえ、この歌では突き放されるというか、長澤知之には到底近づくことはできないということを思い知らされる。
わかりたいのに、届かない。
だけど心がふわぁっと解放されるところもあって。そこでいつも泣きそうになるんだ。
ちなみに、01:57と02:07くらいから入るアコギがものすごく好き。
長澤くんの歌い方もいいよね。1テイクで録ったって感じがしてさ。

我々とは次元の違うところにいる彼の精神世界。その深さを感じる1曲。
私は「言葉のない」エレジィの中で、本当の光を見た。