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つきのいろ

音楽のはなし(旧ブログより移行中)

【Review】 夢先案内人

長澤知之 Review

長澤知之『JUNKLIFE』曲別レビュー

 ★ 01.夢先案内人

JUNKLIFE

JUNKLIFE

  • アーティスト: 長澤知之
  • 発売日: 2011/04/06

「夢先案内人」を一番最初に知ったのは、ライブだったと思う。 2010年4月の大阪だったかな?アンコールでやってくれて。 そのときはタイトルもわからなかった。バンドサウンドがとにかくかっこよくて、「運転手さん」と「逃げて逃げて…」というフレーズがやけに印象に残ってた。

その後、音源として聴けたのはアルバム発売前の携帯先行配信でのこと。 ダウンロードして初めて聴いた夜、涙が出たっけなぁ。これがアルバムの中の1曲ってことは全部聴いたらどうなっちゃうんだ!って期待が膨らんだし、今度のはすごいアルバムになる!って確信したんだ。

 

長澤くんによれば、大元は2009年に出来たらしく、今とは違う内容だったみたい。今のタイトルで書いたのは、彼の親友・andymoriの壮平くんちで、壮平くんが眠っているとき作ったとのこと。 さっきまで一緒に話したりしていた2人が、同じ場所にいながら現実(起きてる人)と夢の中(眠ってる人)という違う世界にいる。そこからヒントを得て出来た曲なのかな~

 

この曲の何がすごいって、音の構成が素晴らしいところだと思う。 イントロのファ~ンって音(管楽器。ホルンかユーフォかな?)と、シャンっていう鈴?とピアノにまず惹き付けられる。霧がかった雰囲気に、なんだなんだ?って心がざわつく。
ちなみに、シャンって音は私に三国志をイメージさせた。←私だけだと思うけど、笑。
つまりはどこか異国の地…ここではない世界に誘われる感覚で、出だしからもうフワフワしている。

そこに入ってくるエレキが最高。 長澤くんお得意の、1度聴いたら耳について離れなくなる高音エレキが、私には夜中の首都高の音に聞こえる。真夜中の高速ってこういう感じの音してるなぁってイメージ。 ここをはじめ、曲中に繰り返し登場するエレキに注目してみると面白い。近くでキ~ンって鳴るときもあれば、救急車やパトカーのサイレン音に聞こえたりもする。左右で絡まっていくように響くときもある。 聴いているうち、どこを走ってるのかわからなくなってきて、自分の今いるところは重要でなくなるというか、ここはどこ?どこに連れて行かれるの?みたいな感覚になっていく。

 

それぞれの音たちが曲の世界を映像化してる。そして歌詞は延々と登場人物の台詞。 私は普段はわりと歌詞からイメージを膨らませることが多いけど、この曲は楽器の音たちによってもそうすることができるから、聴いててすごく楽しい。
楽器毎(コーラス含む)にちゃんと役割があるように思えてくる。 途中から入ってくる逆回転(で合ってる?)とベース&ドラムによって加速するのがわかるし、コーラスは浮遊感を増幅させる。特にメインボーカルより高いコーラスのときはそれが顕著にでていると思う。低い方は対照的に、やっと聞こえるといった感じで、影のように重くそこにいる。そして【血管の全てに鳴らすんだ】のあとのピアノは、シーンが変わる音みたい。
音の構成とともに長澤くんの歌い方にも緩急があって素敵だ。ここ数年の長澤くんは、声自体の変化だけじゃなく曲内で様々な表情を見せる歌い方をしていて、私はそこにすごく惹きつけられている。

 

歌詞の方にも注目してみよう。 登場するのはタクシー運転手と僕。僕が運転手に一方的に話しかけていて、はじめは静かに語りかけるようなのに、途中から何故だかキレた僕が勝手に展開させていく。後半の運転手への自虐的な質問攻めはいかにも長澤くんらしい。

タクシー乗車中という設定だから、タクシー用語や運転に関する単語が随所にあるけど、その使い方もさすが。 思わず感心してしまったのは【3号線沿いで僕はあなたを あなたは僕を拾い合った】の「拾い合う」という言葉。僕はタクシーを拾う、運転手は客を拾うから、お互いが拾うってことで。うーん、すごいわ。「3号線」は実際に九州を走る国道みたい。長澤くんの地元福岡も通っているんだとか。

 

他にも長澤くん独特の言い回しが随所にあって面白い。 一般的な意味じゃない捉え方をした言葉が使われてたりね。 例えば「預金」は普通に考えると銀行に預けるお金という意味だから、「あれ?なんで預金の限りなんだろ」って一瞬思うんだけど、ちょっと考えてみたら事前に出てくる6,300円(運転手さんに預けたお金)のことなんだよね。

「逃げませんよ」と言っておきながら、「逃げて 逃げて」って言うとことかはニヤリとしちゃう。今いる現実から離れたところへ逃げてと。 タイトルと似た【夢への案内人】という歌詞が「24時のランドリー」に出てくるけど、今回は夢へではなく、夢の先へってことだからまた違うよね。夢の先って夢ですか?現実ですか?ってなって、そもそもどっちなのかさえわからない場所で。最後の【逃げて、逃げて、逃げて、逃げて…】は、もっともっとさらわれていく感じになって、ウワーっと宙に浮く。そこでのコーラスが何て言ってるのかずっと知りたくて。聞き取れたのは「~僕の脳味噌グチャグチャにして 運転手さん 運転手さん 僕を導いて 導いて・・・」というところ。でもその前の部分が全然わからない…(どなたかわかる方いらっしゃいますか? )

 

気になるワードは「虹の麓」と「肌色の空」、これらがさすものは何だろう?
虹の麓(夢の先)に僕が求めているものがあるとして。それは確かなもの、絶対的な何かなのかなぁって思う。 でも、そもそもいくら向かって行っても虹の麓には辿り着けない。 (=【祈りすら叶わぬ願い】) 辿り着いたとしても虹の麓にいるということがその人自身にはわからない。 (=【ノックするにも見えないドア】) それでも、「誰か」は「創造通りだ。」と言う。神様って言わないところがまた長澤くんらしい。
僕が求める確かなもの(絶対)には辿り着きたくても着けないし、すぐそばにあったとしても、僕にはそれを確かめることができないってことかな?確かなものは不確かなものと隣り合わせってこと??

冒頭では【人里離れた虹の麓へ】となっているので、僕の求める絶対は人の住む場所からは遠く離れていることがわかる。 でも曲の終わりは【人里離れた虹の麓へ 肌色の空がある虹の麓へ】で締めくくられている。この「肌色の空」が何を意味しているのかを掘り下げてくととても深い気がしてね。単に空の色(風景)として捉えるのか、比喩として捉えるのかで大きく違ってくると思うんだ。
肌色は一般的には人肌と密接に関わるものを意図して使われる表現だそうで。長澤くんはどういう意図で「肌色」としたのかなぁ。

僕が求めている絶対は、人の温もりのようなあたたかさがあるってことかなぁ?それとも、人から離れた場所にあると思っていても、辿り着く先にあるものは結局「人間」からは離れていない。人間を超越するものではなくて、人間に関わるところに在るってこと?うーん、モヤモヤしてきた。今の時点でこれ以上は言えないや。 長澤くんがよく使う「空」についても考えてみると深いよね。ここでは絶対と解釈したけど。

 

 これを書いてるとき、壮平くんの日記の一文をふと思い出した。
「なんだか神様を信じないままで、絶対的なものを欲しがっている自分の姿を夢にみた気がした。」
自分以外の何かに絶対を見つけるのか、自分の内で絶対を見つけるのか。どっちだろう?

 

長くなってしまったけど、この曲は音の構成と歌詞の両方がアルバムテーマでもある浮遊感、現実なのか幻想なのかわからない世界をとても上手に表現している。
聴き手をJUNKLIFEの世界へグッと引き込んじゃう力のある曲。1曲目なのは必然なんだ。

 

【FC2拍手数:4】
(2016/04校正)