ココロノイロ

初期ブログタイトルに戻しました

長澤知之「明日のラストナイト」

長澤知之 『JUNKLIFE』 曲別レビュー

 ★02.明日のラストナイト

JUNKLIFE

JUNKLIFE

  • アーティスト: 長澤知之
  • 発売日: 2011/04/06

この曲はJUNKLIFEの新録曲の中で一番最初に出来たらしい。福耳アルバムでのアコースティックVerと、『長澤知之Ⅱ』で先に聴けてたのはそのせいかしら。

 

最初っから余談になるけど、アコースティックVerの個人的エピソードといえば、この曲をかけてたとき、母親が「この歌ってまくら投げの歌なの?」とのたまいまして。
思わず「はぁっ?」と開いた口が塞がりませんで。
聞いてみたら【赤と真っ暗と青と】の真っ暗を「まくら」と捉えたらしく、赤い枕と青い枕→修学旅行の枕投げ?にまで発展したようです(笑)それ以来、この曲が流れると我が家では「あ、まくらの歌!」となってしまいました。母の想像力には参ります。

 

それはさておき、タイトルのネーミングセンスが素晴らしいよね。
「明日のラストナイト」
これね、面白くって、ラストナイトを訳すと「昨夜」で、明日の昨夜=今夜となるんだけど、日本語英語っぽく捉えると「最後の夜」になって、明日の夜が最後(オメガ)となるんだよね。ダブルミーニングかな?

 

1曲目の「夢先案内人」はさらわれてさらわれて宙に浮いたままで終わってるから、どこに連れて行かれるの?って感じになってるけど、「明日のラストナイト」のイントロで着地してて、それでちょっと安心するんだ。
私はこの2曲は関連してると思っていて。それは後半に書くとしよう。

 

さて、まず「明日のラストナイト」で一番気になるのは何といっても「オメガ」です。
オメガは時計ブランドじゃなくて(笑)、「物事の最後(終末)」のこと。
だから「こと(事、言)」で押韻してるのかな?と思った。
ただ韻を踏んでるだけじゃないんだよね。
特に感心しちゃったのは、【日毎、仕事、悩み事】【夜毎、小言、泣き言】の部分。
韻を踏みつつ、それぞれが関連していて、連想できる3つの単語を並べてる。
短い言葉(易しい言葉)でどれだけ伝えることができるかが歌詞を書く上で大事なことだと思うんだけど、見事です。

 

印象的なギターのフレーズは、アコギとエレキとでは捉え方が全く変わる。
アコギの場合は軽快で、どこかの民族音楽っぽく聴こえる。
エレキのときは、何て言うんだろ、ぐわぁ~っと拡がる感じ。空に放たれるみたいな。
このエレキの部分をサビと捉えるか間奏と捉えるかで分かれるみたいですね。
私はそういうの全然意識してなくて、このエレキのメロディに言葉を乗せるとしたら…ってなんとなく思ってた。←これってサビと捉えてたのと同じですかね?(笑)
あと、2番の【たとえオメガであろうと】の直後のザッザッザッ・・・って音がすごく気になる。胸がざわざわする。
このメロディだけの部分は、聞き手の感性に委ねてるというか、これこそ想像力を発揮する場所。私はここで長澤くんの言葉を思い出す。2010年7月7日の日記。あの投げかけ以来、この歌詞のない部分を聴くたびに考えさせられる。

 

ここからは「夢先案内人」と「明日のラストナイト」の関連性について。
漠然とだけど、車と空でつながっているなぁって思ってるんだ。
夢先案内人はタクシーに乗車中で車関係の描写が結構あるし、ラストナイトの【赤と黄色と青と】は、【誰かのパッシングライト 反対車線の揉め事】の直後にあるので信号機を連想する。
【赤と真っ暗と青と】は空の色。夢先~にも「肌色の空」という空が登場する。

 

夢先案内人では現実味のない感じで使われているものが、ラストナイトでは現実的なものとしてハッキリと映る。雰囲気もそうだけど、やっぱりこの2曲は対比してると思う。夢先案内人では「誰か」としているのに、ラストナイトでは「神様」ってハッキリ言ってるし。主人公の僕もね、夢先~では現実から逃げて逃げて虹の麓に辿り着きたいと願うけど、ラストナイトの僕は求めていたものに辿り着いているというかね。

 

【最期に誇れる事 君の人で在れた事】
この「君の人」という表現がすごく好きだな。
長澤くんてほんとに「わぁ」って感動しちゃう言葉を使うよね。素敵すぎる。
日々の物事は移ろい、そして繰り返す。そんな不確かな世界の中にいても、この歌の僕には明確なものがある。
終末の到来によって自分も最期を迎えるというのに、輝いてるように映るのはそういうところからかな。別れを哀しむより君と一緒に居られたことを想い、愛を悟る僕がいる。

 

明日全ての物事が終わるとわかったとして、そのとき自分はどうするんだろう?
私にはうまく想像できない。
幸福感の中でそのときを迎えたいと思ったら、幸せに思うことをして過ごすかな。
別に特別なことは望まないと思ったら、普段通りの1日を送るのかもしれない。
でもなんとなく、「何をするか」ではなくて、そのとき自分に「何があるか」なんだと思うなぁ。自分という存在が輝く何かが。

 

これだ!と言えるものを見つけるのが先か、オメガが先か。
それとも単に寿命を終えるだけの人生なのか。
「明日のラストナイト」は、これから先もずっと私に問いかけ続ける曲になるんだと思う。