ココロノイロ

初期ブログタイトルに戻しました

長澤知之「バニラ」

ひっさしぶりのレビューはこちらの曲。

★ 長澤知之「バニラ」

長澤知之III

長澤知之III

Amazon

バニラというと甘いものの象徴。味も香りも、これでもかってくらい甘ったるい。
この歌の「バニラ」は女性だ。「貴女」とも、「君」とも呼び名を変えて。
「僕」は彼女にささやくように語りかける。少しだけ包容力を感じるやさしい歌声で。

歌い出しの「恋していいんだよ」にドキッとする。
でも私はこれ聴いて純粋に「恋しよう」とは思えなくて。なんとなく悲しくなる感じ。歌われてることはその通りだなって思うけど、そうは言ってもそんなに単純じゃないって思っちゃうから。シンプルな「好き」という気持ちだけで成立するのは自分の内側だけのことで、他者の前でもそのままでいることは難しい気がしてしまう。外部との接点が生じると、踏みとどまったり、ちょっと考えてしまったり。ああ、こういうところを歌われているのかしらね?ということは私のための歌?(苦笑)
長澤くんから励まされてるという観点で聴くと、すんなり受け入れられる気がする。彼の書くラブソングって、女心くすぐるというか。
私がハッとなったのは【見渡さないで 見たいものを見て】というところ。
見渡しちゃうと自分を抑えるようになる。見たいものだけ見ていれば、欲望のままにいける。両方の視点を持っている場合、その間を時と場合によって行ったり来たりするから、こう言われると我慢しすぎなんだと気付かされる。
【誰のための笑み 誰のためのキス】ってところにもグッときた。
心を奪われるというのは自分の意思に関係なく、かっさらわれる感じだから、もうそうなっちゃったら、歌われてる通り抱えて走るしかないよね。
「これが欲しい」「こうしたい」っていうのをなかなか出せない人に向けて、でもそれが人間なんだから我慢しなくていいんだよ。それは自分の中にあって、外部から決められたり押し付けられるようなものじゃないんだって言ってくれる歌。
対象が何であれ、好きな気持ちがあれば人は生きられる。恋じゃないにしても、好きなものに夢中になっている人の姿は美しいものだ。心のままに貫け。